ミックスやマスタリングを学ぶためには、本を読んだり人に聞いたりWeb検索したり実践したり・・・
と、いろんなことをすると思います。
しかしですね、ミックスやマスタリングのノウハウは確かに存在するとはいえど歴史的には短いもんです。
そもそも日本で言えば雅楽、欧米で言えばクラシックに比べれば電子楽器を駆使した音楽なんてごく最近のこと。
マルチトラックレコーディングどころか、音源をレコードやCD、あげくはmp3でネット配信するなんてことは考えられなかったような文明の進化なわけです。
今の技術(マルチトラックレコーディングなど)が生まれる前は一発録りが当たり前。
戦後の日本でのラジオ放送では、バックバンドも歌手も局のスタジオに入り生歌・生演奏を放送していたとか。
“昭和は遠くなりにけり”とか言うけど、戦前に生まれた人だってまだまだお達者なわけですから、そんなに昔のことでもないんですよね。
そう考えると、レコーディングの方法が進化する時代と共に生きた人がいるはずです。
で、いるんですよね、時代と共に生きたというか、時代を作ったような方が。
そのお方がトム・ダウド。
■トム・ダウド いとしのレイラをミックスした男
“いとしのレイラ”とはエリック・クラプトンがデレク・アンド・ザ・ドミノス時代に発表した名曲。
CMとかテレビのBGMとかでもちょいちょい耳にするのでタイトルは知らなくても曲は聴いたことある人は多いはず。
このDVDはその曲をミックスしたトム・ダウドのドキュメンタリー映画です。
今でこそ当たり前なマルチトラックレコーディングだって昔は無かったわけです。
今でこそ当たり前に上下に動くボリュームフェーダーだって、昔は違ったわけです。
そんな技術が発明されたルーツなんかをはさみつつ、ストーリーは進みます。
エリック・クラプトンやレイ・チャールズなど、名だたる方々の口からエピソードも語られます。
ちょっと音楽が好きなら知ってるような人ばかり。
このDVDを観たからってミックスやマスタリングが上手くなるわけではないと思います。
技術を磨きたいだけならレッスン系の本やDVDの方がずっといいでしょうね。
しかし、技術は感性を表すためのもの。
それをこの映画で学べるのは確かです。
機材や技術というのは進化します。
現在主流のDAWだって、数年後にどうなってるかわかりません。
「時代の流れについていくのは大変だよ~」とか思う人もいることでしょう。
しかしトム・ダウドは違ったようです。
本編の最後で技術の進化に対し柔軟かつ前向きな一言を残してくれています。
この一言を聞くためだけに観ても損はしないDVDだと思います。
もう会うことはかなわないトム・ダウド。
彼の遺したものはとてつもなく大きい。
この映画に入ってるのなんて彼の人生の極々一部なんだろうけど、一部だけでも垣間見れるのは幸いだよね。
トム・ダウド
名プロデューサーであり、名エンジニア。
まさしく、レジェンド。